HOME>大きな声では言えない生保会社の裏事情>営業暴露日記目次
たくみの営業暴露日記?(3)
締めきりが終わり、次の月に。 10日程経過した時、勝野に呼び出された。 「お!これだけアンケートもなじみツール配る所もたまったか。そうだなぁ、そろそろ証券診断でもしてみるか」 勝野が机をゴソゴソと漁り出し、一つの書類を加藤に渡した。 「なじみツール配ってる所に、取りあえずこのチラシを渡してこい」 取りあえず、書類を300枚程コピーする。 「ただいま保険診断キャンペーン中。今保険診断をされますと、もれなく○○のテレホンカードプレゼント!」 ・・・ぶっちゃけた話、大したチラシでもなかった。 「ピンポ〜ン」 ここで気付く読者の人もいるであろう。 精神面でも知らない間にかなり強くなっており、先程のように断られても何とも感じる事なく、次の家を何もなかったかのように訪問する事が出来るようになっていた。 新規飛び込みをしながら、なじみツールを配りなおかつ診断チラシを配る。 結果は特にナシ。 当然、結果を出してナンボという仕事ではあるが、一つ一つ着実に前進しているような気がして、加藤は充実していた。 <診断依頼> 診断依頼が取れたのは、実に次の日、2日目であった。 「あら、今日は何の用?」 昨日と同様、保険診断のキャンペーンの旨を伝えると、 「あら、そう。じゃ、お願いしようかな」 正直あまりにもあっけなく依頼があった為、アンケートを最初に取った時と同じくらびっくりした。 「実は田畑さんが診断依頼第一号ですよ」 そう、たまたまではあるが、アンケート回収第一号もこの田畑さんだった。 早速証券を拝借し、コピーを取らさせてもらい後日診断結果を持ってくるという事で次の飛び込み先へと向かった。 そこから3件目。 「何?保険診断すると○○君のテレホンカードもらえるの?じゃぁお願いするよ」 加藤の会社のCMに出ていた人気グループのメンバーの○○君、どうやら予想以上に人気あるようである。テレホンカードで吊っていいものかどうかと少し葛藤はあったが、結果を出す事を最優先、証券コピーをして次へと。 その日は結局3件の診断依頼、その後2日にて全て消化した時には10件もの依頼が集まっていた。 確率は1/30。 会社にて、勝野登場。 「おぉ、10件集まったか。じゃぁ、これを表にしてまとめるんだよ、こんな風に」 サンプルを見せてもらう。 が、当時はパソコンもワープロも扱えなかった加藤は全て手書きにて作成という事で多大な時間を要する事になり、翌日、翌々日の土日を会社で過ごす事になった。 月曜日。 「そうだなぁ、田畑さんだと子どもの保障がないな。子どもの保障を作って持ってけ。旦那さんは同じ保障額で出してみて持っていきな。ちょっと古い契約だから新しい特約に興味持つかもしれないし、後は〜」 10件もの保険見直し。 設計書作成。 「すいません、これってどうやって打つんですか?」 まわりの人を巻き込んで、設計書を作成。 「いってきます!」 呼び止めたのは、大森支部長であった。 「お前、支部の代表職員になったから、今から会議でてこい」 一体何かというと、翌月の重大月(保険会社のキャンペーン月)にて営業所にて数字を期待している人物を選出して支社にて研修をするという主旨だとの事。 「お前、お客さんとのアポイントはないよな」 なんとも強引である。 <選出会議?> 集まったのは全部で50人前後か。 「今日、ここに集まってもらったのは翌月の重大月のキーマンである君たちにお願いがあるからです。君たちには最低1人修S5000万をノルマとして頑張ってもらいたい」 後の話は覚えていない。 (S5000万って、契約何件取ればいいんだ?最低、4件…か?) 契約自体取った事のない加藤にとって、全く無謀な指示に聞こえた。 (って、なんで俺がここにいるんだ??) そんな事ばかり、頭をグルグル回っていた。 会議自体は予想通り、1時間程度で終了。 「おい、お前どこにいくんだ!これから食事会だぞ!!」 何がなんだか分からないまま、大森の車に乗せられる。 「どこにいくんですか?」 車に乗る事30分程度。 「取りあえず、ビールをみんなについでまわれよ」 良く分からないまま、ホテルの中へ。 (・・・どう考えても前から決まっていたんだよな。なんで前もって教えてくれないんだよ) やがて、料理が出てくる。 (これ、一体いくらくらいかかるんだ?) と、味よりもそんな事ばかり考えていた。 「○○営業所の加藤です、よろしくお願いします」 若い男性だった事もあってか、加藤はコップ20杯程度のビールを飲まされる事になった。 (昼間から、なにやってるんだ?) 昼間から酒を飲み、豪華な食事を食べる。 小1時間程経過したであろうか。 (あれって、歌手の○○じゃん!) 中堅的人気とはいえ、まさか歌手までよんでいるとは夢にも思わなかった。 「え〜、○○生命○○支社の人たち、こんにちわ〜。今日は○×▼◆…」 何かをしゃべって、歌を数曲歌ったのだけは覚えているが… ホテルを出る頃には時計は17時になろうとしていた。 「これだけメシ食ったのだから、7月は沢山取らなくてはダメだぞ!」 (って、俺は連れてきてくれなんて一言もいってないじゃんか…) 何かある意味はめられたような気がしてならなかった加藤であった。 (それにしてもまだ1件も取れていない自分を選出するなんて、一体何考えているんだ、この人は) と、そんな思いも。 当時、二度とは来る事がないであろうと思っていた会社の食事会。 <結果訪問、そして…> 思わぬ出来事の為、1日遅れてしまった証券診断結果の訪問。 (全件ダメだったらどうしよう…) そんな嫌な考えが頭をかけめぐる。 と、マイナスの方向にばかり考え、空想の中で時間だけが過ぎていく。 (まぁ…今回結果が出なかったら、退社しよう) とまで思った程だ。 重い足を動かすのに、どれくらい時間がたったであろうか。 (とにかく、動かなくては) 実に、時間にしたら3時間はたっていたであろうか。 田畑さんの家へ。 呼び鈴を鳴らす。 「あら、加藤さんいらっしゃい。どうぞお入り下さいませ」 丁寧にも、応接間に通して頂いた。 「このように保険内容をまとめてみました。旦那様の保険は▼◆○×〜」 (うわ…これはダメか??) 「なる程ですね、では奥様自身の保険が今の所入っていないようですが…」 (うわ…ダメじゃん…) モロくも見込みがガタガタと崩れる音が聞こえそうだ。。 「一応、子どもさんの保険も持ってきたのですよ…」 正直、子どもの保険自体は設計書作成段階にてついでに等しい形で作成、持ってきたものなので、何の期待もしていなかった。 「あら、子どもだとこんなに安くなるの?」 あまりの意外な答えに、帰りの階段にてズリ落ちた程、舞い上がっていた。 (はじめての契約になるのかな?いや、旦那さんが反対するかもしれないし…) 人生を大きく左右される結果になる、大袈裟ではあるが、そのくらいに思っていた。 夜、帰宅後。 翌日。 会社の朝礼は、当然のごとくうわの空で何も覚えていない。 あきれるかと思われるが、この時ばかりは神頼みという事にて、神社へ出向き15円をさい銭としていれる。ちなみに15円の意味は「十分御縁がありますように」という意味を込めて(笑) …この神頼みは今後しばらく加藤は続ける事になる(笑) 神頼みが終了、いよいよ結果を聞きに田畑さんの家へ。 「ピンポ〜ン」 (ゴクリ…)
<保険診断チラシ>
心機一転、新しい事を試みる事をするという事は一切なく、同じように飛び込みアンケート・なじみツール配りにて日々が過ぎていく。
アンケート回収は500枚を超え、なじみツールを配る所も200件に達していた。
そのチラシの内容はというと…
まぁ他にやる事もない為、ダメ元でいいや…という気持ちで、飛び込みにいく事にした。
「あら、加藤さん、どうも。今日は何?」
「実は今保険診断のキャンペーンを会社でやってまして、そのお知らせで回ってきました」
「あらそう。ただねぇ、うち親が保険会社に勤めていて加藤さんには入れないのよ」
「あ、そうですか。また何かございましたらいつでも声をかけて下さいませ。失礼します」
加藤のトークがなんとも自然になっている事を。
最初は緊張して上手くしゃべれなかった加藤も、1ヶ月の飛び込み・ツール配りにて自然に言葉がスラスラと出てくるようになっていたのであった。
加藤が自分の成長に気付くのはもう少し後の話であるが…
効率がいいのか悪いのかは分からないが、この日は40件程度に診断チラシを配って終わった。
が、加藤は落ち込む事がなかった。
加藤のノートには新たに「顧客の保険に対する意識」という項目が追加された。
Aさんは親が保険外交員、Bさんは即断り、Cさんは今は考えていない(保険加入なし)等。
昨日と同じように診断チラシを配りはじめて5件目。
「!」
「あら、じゃぁアンケートと同じでまた最初なのね、おほほ」
思えば勝野リーダー同様、この人によって自分は支えられている…そんな気すらしたくらいだった。
また反応が。
「!」
果たしていいのか悪いのか。。
なんて事はない、死亡保障が合計でどれだけか、入院保障はどれだけか、個別にまとめただけのものである。
勝野に指示をあおぐ。
加藤が素人同然で何も知らないという事もあり、事細かくメモかきでの指示。
時間にして全ての指示を受けるまで1時間程かかった。
・・・なんと、加藤は入社50日にしてはじめてまともに設計書を作成したのであった。
当然、使い方、研修中に教わったといってもすっかり忘れている。
「なんだお前、こんな事も知らないのか!!!」
通常なら数分で終わる設計書打ち出し、加藤は実に1時間要した。
さて、飛び込みにいくぞ、と時計をみたら12時を回っていた。
「おぉ、加藤、ちょっと来い」
大森はいわば勝野の上司的存在であり、営業所の中で上から2番目の位に値する人物である。
勝野同様、一般営業職員から入社、勝野以上に契約をバシバシとり、支部長に成り上がった経歴を持っている。
「えぇ?」
「いや、今日は保険診断の結果をお客さんに配ろうと思っていたのですが」
「時間の約束はしてないよな」
「はぁ」
「じゃぁ会議でてこい!」
急きょ予定変更、会議といってもそんなに時間はかからないであろうと思い、渋々支社へ出向いた。
うちの営業所は4人。
「!」
あまりにもとんでもない事を指示され、パニック状態になっていた為に。。
さて、飛び込みにいこうかな、と思った矢先、また大森が加藤を引き止める。
「え?」
「さっきもいっただろ!食事会にいくんだよ」
「って、遠いですね」
「バカ、食事会がそこらの定食屋だと思うのか!」
「?」
到着したのは某一流ホテルであった。
存在自体は知っていたが、加藤の収入ではとても利用するのが厳しい所と思っていた為、当然中に入るのははじめてである。
「え?なんでビールがあるんですか?食事じゃないんですか?」
「バカかお前!食事会で普通にメシだけ食べるはずないだろが!」
「!」
宴会場のスペースであろうか、まるで結婚式の会場のような形にて席割りしてあり、加藤の席もしっかりと用意してあった。
中華のコース料理のようだ。
ビールを汲みに回る。
「おぉ、お前も飲めよ、返杯するのは当たり前だろ!」
「え?」
一般から考えると非常に不思議な光景である。
いきなり壇上にスポットライトが。
そして1人、登場してきた時に、思わずビールを口から吐き出しそうになった。
ディナーショー、いや昼間だからランチショーか。
一体なんなんだ?
加藤は「なんで俺がこんな所に」という事ばかり、頭を巡っていた。
帰りの車の中で大森が一言。
この時、日常茶飯事的にこれらの食事会に出る事になり、この派手やかさに慣れてしまう事になるとは加藤は知る由もない。
早速翌日さっそうと訪問へ。
結果は、4件はルス。
3件は「あら、そう。今は何も考えていないから」とあっけなく断られる。
まぁ、いきなり反応がある筈ないなとは予想していたものの、少しの希望もあった為、少々ショックを受ける。
今まで2ヶ月近くやってきた事が全て無駄になる…
その前に今月も取れなかったら会社に残る事は出来るだろうか…
入社以来、ここまで足が重くなったのははじめてである。
気がつくと、空は朱色に染まっており、風が汗を乾かすかのごとく柔らかくふいていた。
長い空想の世界から、ようやく現実世界へと歩みはじめた。
自分の中で一番といっていい程、見込みがありそうな所である。
「なる程ね。ただ、○○生命の担当の人とは数年来のつき合いがあるのよね‥」
「そうなんだけどね、私は去年入院してるのよ…」
が…
「はい、年齢が若い事もありますし…」
「じゃぁ、入ろうかしらね」
「!!」
「加藤さんとおつき合いしておいて損はなさそうですし。旦那に相談してみるから、明日また来てくれる?」
「はい!」
期待と不安にて眠れない事を想像していたが…よほど精神的に疲れた為か、いつも以上に速攻で寝てしまう。
運命の判定が下される日。
今までにこれ程緊張感を味わった事は今までの人生にてなかったと思う程であった。
勝野が何かをいっているが、右から左状態でから返事しか出来なかった。
朝礼後、返事を聞きにいくが為、地区へ。
「あら、加藤さん、こんにちは。旦那に聞いたら…」