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たくみの営業暴露日記?(4)
契約が…取れた。 何故「どうしよう」と思ったか?というと、加藤は契約がとれればいいな、と思う反面、「世の中そんなに上手くいく筈ないよな」と思っていた部分が強く、契約が取れた後の準備を全くしていなかったのである。 (契約書、どうやって書くんだっけ…確か、こうだった…かな?) 契約書は当然用意してきている。 (さて…確か銀行引き落としの紙を書いてもらうんだったよな…ん??銀行引き落としの紙が…ない???) しまった…そういえばそのような紙あったよなぁ。 「す、すいません、銀行引き落としの用紙を忘れてしまったので、今から至急会社に取ってきますね」 慌てて会社へ急ぐ。 「ただいま戻りました」 勝野に契約書を見せると、間髪をいれず、怒鳴り声が。 「バカ!契約者と被保険者の印鑑同じだろ。後、ここ書いてもらってない!!後面接士の予約は?etc.......」 不備の嵐、だった。 「はやく契約書作り直してもう一度契約書、書いてもらえ!!」 …契約が取れた喜びは一気に覚め、何故か締めきり間近に契約が全く取れていない焦燥感に似た感情が加藤を覆った。 (また、不備だったらどうしよう…) そんな思いを抱きながら、再び田畑さんの家に。 「すいません、実は契約者と被保険者の印鑑は違うものにしないといけないんですよ。後〜」 銀行引き落としの紙も書いてもらい、今度こそ完了だ!と思い、会社に戻る。 「バカ!横線訂正の所に訂正印がないだろが!!訂正印貰ってこい!!」 三たび、田畑さん家へ。 「す、すいません。一つだけ訂正印お願いします。ここの横線訂正の所に訂正印押さないとダメとの事なんですよ」 今思うと、よくもまぁ怒らずに何度も契約書の訂正等してくれたものだと思ってしまう。 そして、また会社へ。 「おぉ、今度は…ちゃんとマトモな契約書だな。ただ、ミスが多い!お前、これから契約書の書き方繰り替えし覚えておけ!」 まるで小学生の漢字書き取り練習のように、何度も何度も契約書を書いた加藤であった。 加藤にとっての初契約、少しほろ苦い思いでになってしまった。 なにはともあれ、加藤の保険営業物語のストーリーが、ようやくスタートする事になったのである。 【勢い】 翌日の朝礼、先日の成果が発表される。 「加藤、1件修S1202万」 ジーン。。。 ただ、あくまでもこの程度の数字では注目を浴びる事はなく、他の人達の成果に埋もれる形になる。ズラっと並ぶ、先日の成果発表の数字。 いつものように、地区へ出向く。 「ピンポ〜ン」 この家へは何度かなじみ活動をしていた事もあり、少なくとも警戒なくドアを開けてくれるようになっていた。 「実は今日、保険の設計書を持ってきました、上からの命令で…」 当然、そのような指示等出ていない。 取りあえず加藤は過去アンケートを取った際に保険未加入の所に保険を提示してみる事を試していたのである。田畑さんのようなラッキーを再び求めて。 「ん〜、保険は入ってないけど、今私は入れないのよね」 入社当時の加藤からは想像出来ない程、すんなりと言葉が続いた。 「丁度、今うちの会社、社員募集しているんですよ。よかったらその説明会来ませんか?」 勢いとは恐ろしいものである。 当然、説明会があるというのも嘘。保険業界というのは常に人を求めていて、入りたい人がいたらいつでも話をし、勧誘するものなのである。 14:00と16:00という選択というのも嘘。別に四六時中営業部長は営業所にいるので、時間なんていつでもいい訳だが、なんとなく時間指定した方が決断を促しやすそうだったので。 営業トークという点でいうと、「2つの選択話法」「丁度今日〜という、特別感を持たせる話法」「入社を、ではなく、敢えて説明会という事で業界のイメージアップ」という3つの技術を駆使していた事になる。 早速、会社に戻る。 「ただいま戻りました、営業部長いますか?」 全くその通りである。 「ちょっと加藤待て、お前、昼飯はどうするんだ?」 思わず、心で歓喜のガッツポーズを。 某有名ホテルのランチ。。 「どうだ、上手いだろ」 何故か、ワインまで。 「さて、そろそろいくか、迎えに」 会計へ。 「合計で、11050円となります」 耳を疑った。 そして、迎えにいき、会社で説明会。 話終了後、彼女が一言。 「私、もしかしたら非常に今大きな人生の分岐点になっているような気がしてならないの」 まぁ、この業界を垣間見た人は少なからずそういうもので…ある。 「…地区営業って、思わぬ出来事、あるんですね」 営業部長は、答える事なく、静かに頷いた。 【7月戦前】 6月の初契約が取れた後、結局その月は後1件の契約をあげる事に成功した。 『毎回このような人ばかりだと、非常にラクなのにな』 と加藤がその時思ったのはいうまでもない。 通常、生命保険会社の締切り日は24日になる。 本来なら、その月の締め切り週という事でバタバタとしている筈の営業所に、全員が集められていた。そして、営業部長の話がはじまった。 「え〜、6月の締め切り、御苦労さん。今日から実質的に7月戦になる訳だが、第一報の予定を今から聞かせてもらう」 第一報?聞き慣れない言葉だ。 「ん?第一報??まぁ、単純な話、来週頭にどれだけの契約をとってくるのか?という事だな」 会話の途中で、営業部長が勝野に話し掛けて来た。 「勝野、7月第一報の数字は?!」 それに間髪いれず答える勝野。 「はい、えぇ、4件4800万です」 その数字を聞いて安心したのか、一瞬ニヤっとしたような表情を浮かべたと思うと、間髪いれず加藤に聞いて来る。 「次、加藤。数字は?!」 全くもって、訳の分からないやりとりが続いていた。 『な、なんなんだ、7月ってのは…そ、そういえば、選出会議たるものに出ていたような‥修S5000万とかいっていたっけ?え??』 ちなみに、当時新人である加藤の本来のノルマは低く、修S1500万でノルマ達成というものであった。 何故…7月に通常月の数倍もの契約をあげなければならないのか… 聞いた答えは「重大月、いわゆるキャンペーン月だからだな」との事であったが…数年たった後にも、この重大月に契約を大量に出さなくてはならない理由というのは見つけだす事は出来なかった加藤である。 ただ、研修期間中から教わってきた事、上司のいう事は絶対服従。 契約がよ〜やくとれるようになった加藤にとっていわば無謀とも思える数字が重く加藤の心にのしかかっていた。 「リーダー、どうやったら通常月の数倍の契約とれるんです?」 …なんともひねりのなにもない、アドバイス(?)を受け、訳の分からないまま、7月戦の準備が行われようとしていた。 幸いにも、丁度先月(といっても本来なら6月なのであるが…)にアプローチ…というよりは殆ど相手側から切り出してきた話であるが…していた先から保険入るよという返事を受け、無謀とも思える1週間の間で成果をあげるという事に奇跡的に成功した。 飛び込み、いわば「下手な鉄砲も数うちゃ当たる」というのはまさしく加藤の事を示し、数こそそこまで多くはないが、相手側から話を切り出してくるという事も案外あったりする。それで加藤は何度助けれた事か。 契約が取れたのが、実に22日の金曜日、ギリギリであった。 【飾り付け&決起会?】 23日土曜日、当然のように出社命令が出ていた。 ちなみに平日は8:00までに出社(本来は9:00までに出社なのだが)で、お茶汲みやら掃除等やらされていた。 いつものように10:00に出社、大森支部長がいきなり一声。 「遅い!お前、なめとるのか!!」 …勝野の連絡ミスだったらしい。 (…何をしている…んだ??) パっと見、大掃除のように見える。が…何かが違う。 「とにかく、加藤!お前は桑原と買い物にいってこい!」 何がなんだか分からないうちに、買い物に出ていく事に。 「せ、先輩。一体なに買いにいくんですか?」 全くもって意味が分からない。 海の波の音のCD等、一体何に使うんだ? 訳分からないまま、2時間弱の時間をかけ、買い物終了。 「ただいま戻りました」 …何がなんだか分からない。 「さて、今から飾り付けするぞ!」 ここから、一斉に部屋の模様替えがはじまる。 「あの、一体何してるんですか?」 なんて強引な理屈なのだろうか… 実に3時間くらいが経過したであろうか… な、なんて悪趣味な…と思わず口に出しそうになったのを必死に腹の中にしまったのはいうまでもない。 バックミュージックは波の音。 一体…何の意味があるのだろうか…しかも、20万超のお金を使って。。 時間は16:00、これで晴れて解放されるかと思いきや、「さ〜て、今から決起会やるぞ」という言葉と共に、飲み屋へと。 【決起会?】 「じゃぁ、今日はお疲れ様」 ビールを乾杯して飲む。 「そういえば加藤、お前第一報はどうなった?」 ははは、昨日なんとか入れていたので、いわば自慢げに1件取れている事を報告すると、予想外の答えが。 「お前、アホか!!1件だと??ここにおるヤツみんな4件は出来てるぞ!」 なんともハードな世界に入ったという事を、いやおうなしにも思い知らされた。 「選出会議でもお前、メシ食べただろう。その分もお前は働かなくてはいけないんだぞ!」 タダ飯を食べれる程甘くないよ、と。 「勝野、お前は今年はS2億ノルマな」 選出会議の時いわれた数字がS5000万、決起会でいわれた数字がS1億、倍になった。。 「お前は他のやつより、入社以来数字をあげてないんだ!このアホんだらぁが!!」 数多くの罵声(叱咤?)を浴びせられ、家路に付く時には冗談抜きに退社を決意していた程である。 (何が悲しくてここまでいわれなければいけないんだ!7月、ドドっと契約あげて、それで辞めてやる!!) なんていうのだろうか…反骨心といっていいのかどうかは分からないが、ともかくも加藤のやる気(前向きかどうかは別として)は最高潮に達していた。 いよいよ、7月戦がはじまる。
<初契約>
過去の出来事が走馬灯のように蘇る…という事は一切なく、不思議なもので逆に「どうしよう」と思ってしまった。
が、実際に書いてもらうとなると、昔(といっても1ヶ月程度前の話だが)に聞いた事があるくらいで、具体的にどこを書いてもらえばいいか分からない。
といっても、保険の契約書自体、書いてもらう部分は多くはなく、なんとか書いてもらう。
すっかり忘れていた…
「あ、わかりました」
自転車で10分ちょっとの距離の場所を、3分で…という事はなくせいぜい8分くらいか。
汗だくになりながら、会社に戻った。
「おぉ、どうだった」
「契約取れました!」
「おぉ、おめでとう!!契約書を見せてみろ」
「あぁ、そうなんですか。分かりました、書き直しますね。あ、ここ間違えちゃった、横線訂正でいい?」
「あ、いいですよ」
そして勝野に契約書をチェックしてもらう。
そしたら、また勝野の一喝が!
「あら、そうなのね。ちょっとまって下さいね…」
本当に、いい人である。
そして、加藤が解放されたのは、既に空は赤く染まっていた。
実際、暫くの間、契約を取ってくる度に「また不備があって、勝野にドヤされるかもしれない」と、ビクビクしたものである。
そう、まるで契約が取れなかった方がいいかのように。
はじめての成果。
思わず胸が熱くなった。
よくもまぁ、これだけ数字が並ぶものだ、と感心すらしたものである。
契約を1件取れたという事で、気分的にちょっと大人になった自分を感じながら(笑)
「はい」
「あら、加藤さん、何?」
加藤自身、いきなり保険設計書を出す話法を持ち合わせておらず、取りあえず加藤自身が設計書提示の理由として強引に考えた末の話法である。
「え?病気なんですか?」
「いや、私実は先日仕事やめたのよね。今次の仕事探してる所なのよ」
「あ、それならうちの会社来ませんか?」
「え?」
「ん〜、いこう…かな」
「では、今日の14:00か16:00ですとどちらがいいですか?」
「ん〜、じゃぁ14:00くらいかな」
「では、その時間にまたお迎えに来ますね」
契約が取れたという事で、この時加藤は「どんな話も上手くいく」という不思議な自信に満ちていた。その為か、スラスラと言葉が。
当然、加藤はそのような事は全く考えてやった訳ではないのだが…
「おぉ、加藤、どうした?」
「実は、今日、今職を探している人がいましたので、一度話を聞きに来ないかという話をしたら、話を聞きに来るという話になったんですよ」
「おぉ!それは凄い。で、いつ来る事になったか決まったのか?」
「それが、今日の14:00に来る約束をしてきました」
「お前、どうしたんだよ。なんか人が違ったように準備がいいじゃないか」
ホント、よくもまぁこんな準備のいい活動が出来たものだ。
その約束を取り付けると、さっそうと再度飛び込みにいこうと出ようとすると…
「いえ、自分は銭今ないので、食べない予定ですが…」
「じゃぁ、奢ってやるから、ちょっと来い!」
そう、加藤は昼御飯をここ暫く食べない事が多く、昼食にありつけるという事自体非常に有り難かった。食事といっても、そこらの食堂みたいな所を想像していたのが…甘かった。。
味は…分からなかった。
というか、何故こんな所で食べる必要性があるのか?という事だけ、頭の中をグルグル回っていた。
「は、はい。。」
よく昼間からお酒を飲む会社だ…と思いつつ、少し頂く。
(はぁ??)
それを驚く様子もなく、ごく当たり前のようにカードで支払う営業部長。
この業界とは、こんなものなのか?不思議に思ったものである。。
といっても、営業部長がただ話をするだけではあるが。
説明会という事で1人では怪しまれるとでも思ったのか、数人営業職員がサクラとして参加していた。
営業部長の車にて、送りにいった帰りの車の中で、加藤が一言。
ラッキー的な契約で、飛び込みした先の人が「丁度保険考えてたんだよ」と、御自身でプランを提案、いともあっさりと契約があがったのである。
が、6月の締め切りはそれよりも1週間早くなっていた。
思わず、勝野に質問する。
「えぇ?締め切り終わったばかりじゃないですか。何故来週までに数字が出来るんです??」
「ばっかだなぁ、お前。7月とはそういう月なんだよ。だから、6月は敢えて契約はおさえて第一報でドンと出すのがミソなんだよ」
「リーダーはちなみにどれだけの数字を…」
「えぇ?いや、数字といわれても…」
「じゃぁ、取りあえず1件1200万な」
勝野のいっていた数字、実に普通の職員の月ノルマの数字よりちょっと多いくらいであった。
いわれたからにはやらなくては、ならない。。
「そりゃ、単純だ。通常月の数倍動けばいいだけだよ」
(第一報=6月25日に契約を入れる事=その日が正式な7月戦スタート日となる)
まぁ普段から土曜日は出社を余儀無くされている加藤にとってはいつもと変わらぬ土曜日の筈であった。土曜日は朝10:00の出社で良かった。
(えぇ??)
「7月戦直前の前の土曜日は男は8:00出社というのを知らないのか!!」
「あ、ごめんなさい、加藤にいうの忘れてました‥」
ともかく、普段と違う雰囲気、何故か皆腕まくりをし、汗だくである。
ちなみに桑原とは自分より2年先に入った先輩(男)の人である。
実に、2人きりになるのは入社以来はじめてで、よく考えたら口も聞いた事がなかった。
「あぁ、ビーチボールとか飾り付けようのヒモ等だよ」
「??何するんですか??」
「はは、今回はハワイのイメージだとよ」
「????」
とあるデパートに到着。
冗談とさえ思っていた代物をどんどん購入していく。
合計費用、実に20万超といった所か。
缶詰めのつめもの50セット??
etc...
「おぉ、ごくろうさん。どれどれ、、ん〜、いい感じだなぁ。このフサフサは波をイメージしたものだな」
2時間近く意味が分からないまま動いていた加藤はとうとう口に出して聞いてみた。
「見れば分かるだろ!営業所の模様替えだよ」
「‥で、何故こんなド派手にするんです??」
「今年はまだ地味な方だぞ。そりゃ7月戦だからに決まってるだろが。部屋をド派手にしたら、みんなもやる気になるだろ?」
「は、はぁ。。」
意味が分かったような分からないような感じで…手伝いをしていた加藤であった。
ちなみに、この行事は未だに行っている営業所があるようである事を付け加えておく。
すっかり営業所内は別世界へと変わっていた。
壁はブルーの紙を張り巡らせ、海をイメージ。
天井からはビーチボールや魚の浮き輪を釣るし、蛍光灯まで色が変わって。。
御丁寧にも、扇風機の風でフサフサが波のように流れるような視覚効果が。
どうやら生命保険会社の儀式のようなものらしいのだが、この感覚が理解出来た事はいっこうになかった。
「お疲れさまで〜す」
いわば営業所の飾り付け、肉体労働に等しかった訳であり、ビールが異様に上手く感じた。
次々と料理が出てくる。
いつもながら、「ここ、いくらで食べれる所なんだ?」と思うような場所である。
なんていうんだろうか…大きな水槽に魚が泳いでいて、それを刺身にしているようで…
「えぇ??」
「入社時にいっただろう、男は出来て当たり前。他の人の2倍やって当然なんだよ。じゃなかったら、いる意味ないんだよ!!」
「えぇ????」
人並みじゃ、ダメだよ、と。
タダ飯を食べたからには、それ相当の成果をあげろよ、と。
そのような事…らしい、当然、この決起会というのも。。
「は、はい…」
「加藤、お前は…まぁ新人という事で、ノルマは1億で許しておいてやる」
「は…」
「ばっか、お前、勝野なんか、最初の時2億以上の成果あげたんだぞ!それに比べれば大した事じゃないだろ!」
「は、はぁ。。」
4件くらいでS5000万いくかいかないか、という事は…要するに8件やれよ、と。
目の前が、思いっきり暗くなった。
etc...
今思うと…かくも上手いやり口だったなぁ…といい思い出の一つになるのであるが(笑)
いわば、「地獄の一ヶ月」が、日曜日を挟み、月曜日から。