さあ、第一報です。
私達リーダーのつかまらない小橋チームは、6月戦もままならぬまま、7月戦に突入してしまいました。
もうみんな慣れたものです。
そして、いつのまにか当たり前になった小橋リーダーからの「あの」伝達が入る。
『白紙でもいいから、入力しなさい』
もう営業部長もこの時期になると、何もいわない。
彼も全員大会でみんなの前にたって、スポットライトを浴びたい一人だからである。
(あれ?よく考えたら…この人ってそういう事を許さない人じゃなかったっけ?)
人とは環境・名誉・プライドによりいくらでも変わっていく生き物と、思わず哲学者み
たいな事を思う設楽でした。
(自爆は出来なくても白紙なら、、。)
あくまでも自爆は回避しなくてはならない。。。
こういう様に「白紙」になれてしまった自分、今考えるとホント恐く感じます。
白紙とは、「契約書に記入していない契約に対し、契約が取れたという旨をコ
ンピューター入力する事」です。
普通は当然契約を頂いてから、成約入力という処理をしていく訳ですが、この
入力は『いつでも』できるんですね。
後から契約を貰ってくる、という形で頻繁にうちの営業所では使われていました。
この入力自体がどれだけ簡単かというと…
神田『えへへ、私5000万の契約つくっちゃった〜』
設楽『!!わ、私も5000万つくろ〜っと』
吉畑『!!!私は1億!!』
神田『ははは、ホントにこんだけ契約取れたらいいよね〜』
と、まぁこんな状態。
白紙作成指令が出た場合、こんなんです。
当然のごとく、小橋チームは支部の中でも異常な勢いでトップの成績をおさめた。
(そりゃ、白紙ですからね(笑))
どうせ落ちる契約なら、少しでも大きな成績をあげてやろうとみんな考えたからでした。
そして、第一報の成績を発表する全員大会へ。
なんと!!久しぶりに、私達の支部がトップをきった。
なかでも小橋リーダーの契約は郡を抜いて凄まじいものである。
小橋リーダー当人は…優秀営業職員で慢心の笑みを浮かべてスポットライトをあびていた。
『25件!!』
支部のみんなはどよめいた。
なぜ第一報でこれだけの成績をだすことができるのだろう???
『私達の班、分割されたのってこの為?リーダー補佐をつければ、彼女は自由に行動
できるもんね。私達の成績より、自分の成績が大切なんだよね…』
小橋チームの誰かが呟いた。
他の班員もあきれかえった顔をしていた。
営業部長も上機嫌で、スポットライトをあびながらいつにもましてトークに熱がはいる。
『真剣に仕事をした結果がこうなっただけです!……
:
20分
:
全員大会の間、、、みんな下を向いていました。
恐らく寝ているのでしょう。
えぇ、こんな話聞いてもつまらないだけですから(笑)
こんな感じで、みな不安を残しながら、全員大会は終わった。
…営業部長あとで泣かなきゃいいけどね。
(全員大会の後)
設楽『小橋リーダー、すごいですね。私達なんて白紙しか出せなかったのに…』
小橋『あぁ、あの契約は全部白紙よ。最終日までに数合わせすればいいのよ』
設楽『!!!と、取れなかったらどうするんですか???』
小橋『大丈夫よ。みんな知っている人の名前使ったから』
設楽『!!!』
(…って、この口調はまだ保険の説明もしてないという事よね……)
おそるべし、小橋リーダー。
ちょっと彼女にピックアップされたお客さんを気の毒に思う設楽でした。
(次の日の朝礼)
部長『え〜、昨日は皆さんのおかげでうちの営業所の成績は支社トップとなった。
ただ、これで気を抜かず、このまま全国制覇を目指そう!分かったか!!!』
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん……
こ、この人って現実を知らないのかしら?
恐らく他のみんなも同じ事を思った事でしょう。
なんか、訳の分からないところでみんなと気持ちがはじめて一体化したような気がした。
(あ〜、よく考えたらまだ実際には契約上げていなかったっヶ。まず白紙をうめなきゃ。。)
こんな状態で、いよいよ波瀾の7月戦に突入していきました。
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