のり子の奇跡の復活物語になる…というのはあくまでも本の中の事である。
現実的に2ヶ月で8件という数字は、あまりにも大きすぎた。
10月の成果、2件。
久しぶりに「件数」が成績としてあがった月となった。
11月の1ヶ月で6件。
決して不可能な件数とはいえない件数ではある。
が、のり子は10月が終わった段階で気力は尽きていた。
(あれ以上頑張れない…!もうダメ。奇跡で出来たとしても、一番下の位では食べていけないし)
誰かが助けてくれる仕事ではない。
自分でのみ、気力を起こして頑張らなくてはならない。
今回が奇跡で今の成績を維持出来たとしても、営業の仕事の場合は翌月よりまたゼロからのスタートの繰り返しとなる。
急激にやる気が萎えたのり子がとれる選択肢は、「ドロップ」しかなかった。
<10月26日>
のり子「営業部長、ちょっと…」
部長「ん、何だ?今忙しいから簡潔にいってくれ」
のり子「これ…」
部長「…分かった。後の引き継ぎとかちゃんとやっていけよ」
のり子が渡したもの、退職願いであった。
何もいわずに受取った営業部長に対して、有り難さと何かいってくれないのか、という寂しさの2つが重なりあい、非常に複雑な気持ちになった。
辞める事…この事によって態度がガラっと変わった人物がいた。
小橋であった。
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